支援機関インタビュー - 『教えて!医療観察』(神奈川県モデル活動研究会)

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社会復帰調整官

医療観察制度の支援に携わることになったきっかけを教えてください。

syakaihukkityouseikan  元々、精神科病院に勤務していた時に"医療観察制度"が始まり、鑑定入院や通院の受入れを通して、本制度の対象となった方と関わっていました。
 対象者自身が参加する形のケア会議、多機関による連携型のケア、入院から通院へのつなぎ、一貫した支援など、これまでやりたくてもできなかったことが動き出したことに感動し、自分も携わっていきたいと思ったのがきっかけです。

 

ご自身の医療観察制度における支援や関わりについて、具体的に教えてください。

 社会復帰調整官は、本制度の対象か否かを判断する当初審判段階の生活環境調査、入院処遇中の生活環境調整、通院処遇中の精神保健観察まで、一貫して関与するコーディネーターとしての役割があります。
 いずれも病院のスタッフさんや地域の支援者の方々との連携があって初めて成り立つものであり、そうした協力関係が不可欠です。

 

医療観察制度の支援に携わってみて、やりがいや苦労したこと、悩んだこと、ためになったことなどを教えてください。

 一貫して関わる責任感がありますが、それが同時にやりがいでもあります。ある対象となった方の担当者として7年間関わった経験がありますが、その方の回復や、それを支える過程を目の当たりにできることが一番のやりがいです。
 苦労していることは、医療観察制度や対象となった方の人となりを理解してもらうことです。しかし、この支援に携わることは、自分自身の人生観が変わるほど、貴重な経験になっています。

 

機関・個人として支援に関わるにあたり、今後の希望や展望などを教えてください。

 この制度を精神保健福祉に関係する専門家に広く知ってもらい、対象となった方の社会復帰に携わる支援者が一人でも多く増えてほしいです。また、個人的には、こうした制度の対象とならないように地域社会で精神障害のある方が、今よりも支えられる世の中になることを願っています。 kankei p3

 

今後、医療観察制度の支援をしてみたいと考えている関係機関の方にメッセージをお願いします。

 精神障害が原因で重大な他害行為を起こした方は、制度が施行される前は「十分な治療や支援」が行われず、場合によっては長期入院を余儀なくされる方もいました。しかし、様々な支援を必要としている方々です。一緒に悩み、考え、支える人になりませんか。
 あなたの支援を待っています。

 

 

指定通院医療機関

医療観察制度の支援に携わることになったきっかけを教えてください。

 以前勤務していた病院が、医療観察制度の指定通院医療機関として、その対象となった方の受入れをしていました。そこで初めて担当しました。

ご自身の医療観察制度における支援や関わりについて、具体的に教えてください。

 当院では、2チーム制で担当しています。具体的な関わりとしては、通院処遇開始時の導入面接や日常の定期面談、関係機関の調整や訪問などを行っています。また、治療評価会議にも出席しています。

医療観察制度の支援に携わってみて、やりがいや苦労したこと、悩んだこと、ためになったことなどを教えてください。

 一人の対象となった方に対する支援を通じて、多方面の関係機関とやりとりやつながりができていることが、やりがいです。
 気になる点としては、医療観察制度の対象として関わることができる期間が定められているので、その期間が終了した後のその方の経過が心配です。支援に携わるスタッフとしては、やりがいや成果を感じる機会がありますが、この制度に関わっていないスタッフには、今ひとつ伝わっていないことが現在の課題でもあります。
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機関・個人として支援に関わるにあたり、今後の希望や展望などを教えてください。

 医療観察制度に携わる支援者として、機会があれば、どんどん引き受けたいと考えています。
 指定通院医療機関として、内省などに関するプログラムの必要性を感じており、実際のその導入を検討しています。指定入院医療機関で学んできたことが、通院に移行して時間が経過すると「忘れていってしまう」方も見受けられるので、指定通院医療機関においても継続してプログラムを行うことが必要ではないかと感じています。
 また、指定通院医療機関に対する金銭的な面でのサポートの充実も良いのではないかと考えます。
 指定通院医療機関のスタッフに対しても、勉強会など本制度の普及や理解を促進する取組が必要だと思っています。また、事務職から現場での困りごとなどが出てきているので、他の指定通院医療機関などとそのような問題を共有したり、学んだりする機会を作れたら良いのではと思います。

今後、医療観察制度の支援をしてみたいと考えている関係機関の方にメッセージをお願いします。

 医療観察制度は、チーム医療の実践です。
 実際にケア会議などの場で地域関係者と交流ができるのは、普段、病棟内での関わりが中心となる病棟スタッフにも良い刺激となります。処遇で用いられるクライシスプランなど、医療観察制度の対象ではない患者さんに対しても"工夫"することで利用できるツールは存在しており、通常の業務においても役立つ部分は多いのではないかと感じています。
 対象となった方への支援については、経験を生かして関わる部分もあるため、「自分の経験では難しい。」、「大変。」という印象を持たれるかも知れないですが、一人のケースを通じて得られる経験は多いと感じています。当院でも、経験者のサポートを付けながら新人などにも関わる機会を持ってほしいと思っています。
 これまで医療観察の対象となった方と関わった経験がない関係者の皆さんにも、まずは研修などを通じて、医療観察制度の支援を知る機会を作ってもらえたらと思います。
 今後は、地域における対象となった方への支援事例を充実させて、入院施設だけでなく指定通院医療機関も増やしてもらいたいと考えております。また、制度として加算が付くと実現しやすく制度も浸透しやすいと思うので、そちらの働き掛けもしてほしいです。

 

 

精神保健審判員

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『精神保健審判員として思うこと』

 平成17年7月の心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律(以下、医療観察法と略す)の施行以来、精神保健審判員として10例以上の審判事例に関わってきた経験から、精神保健審判員の役割や医療観察制度への考え方などについて述べてみます。

 

1.精神保健審判員の役割 

 精神保健審判員とは、医療観察法第6条から第11条に規定された新たな資格といえます。「精神保健判定医」という医療観察法に定める精神保健審判員の職務を行うのに必要な学識経験を有する医師の名簿をもとに、地方裁判所が毎年あらかじめ選任したものの中から、処遇事件ごとに地方裁判所が任命することになっています。

 精神保健審判員は、最高裁判所規則で定めるところにより、法令に従い公平誠実にその職務を行うべきことを誓う旨の宣誓を行い、地方裁判所において、一人の裁判官及び一人の精神保健審判員の合議体で医療観察法の処遇事件を取り扱うことになります。合議体による裁判の評議は、裁判官が開きかつ整理をしますが、その中で精神保健審判員は精神障害者の医療に関する学識経験に基づき意見を述べなければなりません。また合議体による裁判の評決は、裁判官及び精神保健審判員の意見の一致したところによるとされています。

 横浜地方裁判所の扱う処遇事件の場合、具体的な仕事の流れは次のようになります。まず横浜地裁よりある処遇事件について精神保健審判員を引き受けてもらえないかという打診があります。それに同意をし、宣誓書に署名をすると、事件に関する分厚い一件書類が送られてきます。この一件書類を精査・吟味することが精神保健審判員にとって最も重要な作業の一つといえます。

 一件書類には、審判申立書をはじめ、過去の精神診断書、対象者や関係者の供述調書、捜査報告書など当該処遇事件に関する全ての書類が綴じこんであります。審判期日に法廷で対象者に会うまでは、この一件書類が精神保健審判員にとっては当該処遇事件の全ての情報源ですから、きわめて重要なものです。分量が多く流し読みでは整理しきれませんので、しっかりメモを取りながら読み込み、事実の経過を時間軸で整理し、供述調書の整合性・矛盾点をチェックし、事件の詳細を把握します。そして対象者の生活歴、家族関係、薬物使用歴、犯罪歴、既往歴、現病歴を整理し、他害行為前の精神状態、他害行為時の精神状態、他害行為後の精神状態について事実を注意深く確認した上で、精神障害の有無、考えられる診断名、その精神障害と対象行為との関連性、および責任能力の有無について検討していきます。

このように事件の全容を正確に把握し、対象者の疾病性と治療反応性、社会復帰要因、責任能力などについて自分なりの考え方を整理しておくことが、その後の審判前カンファランス、審判期日の質疑および合議体における評議・評決にとって大切なこととなります。このことが「精神障害者の医療に関する学識経験に基づき意見を述べなければならない」という精神保健審判員に課せられた最も重要な役割と言えます。 

 

2.当初審判で心がけていること

 審判には、当初審判、入院継続の審判、退院決定の審判、再入院の審判、通院期間延長の審判、医療観察法による処遇終了の審判の6種類があります。このうち当初審判は対象者のその後の運命を決定してしまう重要なものです。

重大な他害行為を行った者で精神障害の疑いのある者については、警察・検察での事情聴取を受け、簡易鑑定や本鑑定による刑事責任能力鑑定の結果、検察官は、以下の場合、明らかに医療を受けさせる必要がない場合を除いて、申立てをしなければならないとされています。

  • 被疑者が対象行為を行ったが、心神喪失ないし心神耗弱を理由に不起訴処分としたとき
  • 心神喪失を理由に無罪となる確定裁判があったとき
  • 心神耗弱を理由に刑が減軽された確定裁判があったとき(執行すべき刑期がある実刑判決は除く)

この検察官の地方裁判所への申立てを受け、医療観察法の手続きが開始されます。対象者は直ちに鑑定入院医療機関に入院し、鑑定医による精神鑑定を受けます。同時に担当の裁判官、精神保健審判員、精神保健参与員、付添人、社会復帰調整官が任命され、当初審判の準備が整います。

当初審判では、鑑定医による鑑定を基礎とし、対象者の生活環境を考慮して、以下の決定をしなければならないとされています(法42条)。

  1. 対象行為を行った際の精神障害を改善し、これに伴って同様の行為を行うことなく、社会に復帰することを促進するため、入院をさせてこの法律による医療を受けさせる必要があると認める場合 医療を受けさせるために入院をさせる旨の決定(入院)
  2. 前号の場合を除き、対象行為を行った際の精神障害を改善し、これに伴って同様の行為を行うことなく、社会に復帰することを促進するため、この法律による医療を受けさせる必要があると認める場合 入院によらない医療を受けさせる旨の決定(通院)
  3. 前二号の場合に当たらないとき この法律による医療を行わない旨の決定(不処遇)

医療観察法の医療が必要か否かは、疾病性、治療反応性、社会復帰(阻害)要因及びそれらの時間軸での推移をもって判断することになっています。これらを吟味し、医療観察法の医療が必要かどうかを判断するのが第1段階、医療観察法の医療が必要であると判断した場合、入院が必要か通院でも可能であるかの判断が第2段階となります。

 疾病性については症状が確認できれば比較的容易に判断できます。また社会復帰(阻害)要因についても、今回の対象行為のほか、過去の病歴や生活歴、性格要因、犯罪歴などを考慮すれば判断はそれほど難しくないと思います。しかし治療反応性については、現時点におけるわが国の医療水準からみて判断することになっていますが、この判断にはなかなか難しい問題があります。日進月歩の医療において、現時点におけるわが国の医療水準とは何を基準にするのか判断の難しいところです。人格障害は一般的には治療反応性がないと考えられていますが、境界性人格障害などはどう考えるか。広汎性発達障害も治療反応性がないとされていますが、本当にそれでよいのか。知的障害や認知症はどのように考えるかなど判断に迷う場合は少なくありません。そのような時は、いろいろな状況を考慮しながらも、やはり何が対象者にとってベストかという視点で判断することになります。そこが医療観察法は司法モデルではなく医療モデルであるといわれる所以ではないかと思います。この点については、ある裁判官の「今までの裁判では法律と判例に基づいて正確に判断すれば良かったのですが、医療観察法ではある決定をしたときこの対象者はどのような処遇を受けるかまで考えるようになったのが大きな違いです。」という言葉が示唆的といえるでしょう。

 

3.医療観察制度への期待

医療観察制度の長所は次のような点にあります。それは、①処遇の開始から終了まで対象者に寄り添う社会復帰調整官が新設されたこと、②裁判官が精神保健審判員とともに処遇の決定に関わること、③専門的なプログラムに基づいた多職種チーム医療が提供されること、④特に入院医療においては30床の病床に対し50数名の医療スタッフが関わる手厚い人員体制が確保されていること、⑤地域での継続的医療を確保する仕組みがあること、⑥医療の透明性と人権に配慮した医療体制が確保されていること、などです。医療観察制度は、裁判所、法務省、厚生労働省、地方自治体の所管課・保健所・福祉事務所、指定入院医療機関、指定通院医療機関、鑑定入院医療機関など、司法、行政、医療機関を巻き込んだ国の一大事業といえます。

これらは従来のわが国の精神科医療では望んでもかなえられない医療体制でしょう。一般精神科医療は貧弱なまま、医療観察制度だけに予算を注入するのは本末転倒ではないかという批判ももっともですが、医療観察法医療で成果をあげることで、一般精神科医療に必要なものがより明確に見えてくるのではないかと思われます。医療観察法附則第3条では、「政府は、この法律による医療の対象とならない精神障害者に関しても、この法律による専門的な医療の水準を勘案し、個々の精神障害者の特性に応じ必要かつ適切な医療が行われるよう、精神病床の人員配置基準を見直し病床の機能分化等を図るとともに、急性期や重度の障害に対応した病床を整備することにより、精神医療全般の水準の向上を図るものとする。」、「政府は、この法律による医療の必要性の有無にかかわらず、精神障害者の地域生活の支援のため、精神障害者社会復帰施設の充実等精神保健福祉全般の水準の向上を図るものとする。」という文章が付されており、一般精神科医療や地域生活支援においてもその充実を図るよう求められています。

医療観察法施行から10年目を迎えようとしている現時点では、多職種チーム医療やケア会議の実施の広がり、難治性統合失調症に対するクロザピン使用の普及などにその成果の一端が見え始めています。

 

4.やりがいや苦労などについて

 やりがいと苦労は表裏一体の関係にあるものです。精神保健審判員として最も苦労するのは、精神障害であるかどうかがはっきりしない場合、精神障害が重複している場合、精神障害の症状と他害行為の関係がはっきりしない場合、事件の全容がはっきりしない場合など、判断に困難を感じるときです。当初審判の決定が対象者のその後の運命を左右することを考えると安易に結論を下すわけには行きません。一件書類を繰り返し、繰り返し精査し、関連情報を文献等で調べ、ようやく自分なりの考え方を整理することになります。その考え方をもとに事前カンファランスで関係者と論議をし、審判期日で対象者に質疑を行い、最終的に大方が納得できる決定ができたときは、精神保健審判員としてほっとするとともに一定の満足感を得ることができます。苦労あればこそのやりがいと言えます。

 

5.医療観察制度への協力を考えている関係機関の方へ

平成15年の医療観察法の成立、平成17年の実施にかけては、多くの団体やグループが様々な理由で医療観察法に反対していました。今でも一部の団体やグループで反対の主張がされています。

その大きな理由の一つは、厳重に隔離された入院病棟で期限の定まっていない入院処遇を強いられること、また通院処遇についても、常に社会復帰調整官の精神保健観察下に置かれていること、治療プログラムが定められており、多職種・多機関のチームの監視下にあること、つまり束縛の多い医療であり人権侵害である、というものです。立場が異なればこのような考え方があるのは理解できますが、実際行われている医療と処遇はそのような批判を受けるようなものではありません。

入院病棟が厳重に隔離されていることはその通りですが、病棟内ではすべて個室であり、アメニティに配慮された空間になっています。病状が安定してくれば付添散歩や外出、付添による外泊も可能です。手厚い人員配置による専門プログラムに基づいた濃厚な多職種チーム医療を受けられることは大きな利点です。入院期間も半年ごとに入院継続の可否を問う審判が行われ無用な長期入院を避けるシステムができています。通院医療に関する批判は、裏を返せばまさに手厚い医療が行われていることの証に他なりません。実際、医療観察制度がスタートしてから現場を見学した多くの人達は、人権に配慮された手厚い医療であることを知り、反対を唱える団体やグループは大幅に減少したように思います。

また医療観察法に距離を置く人の中には、重大な他害行為を行ったということで対象者に過剰な不安を抱いている方々もいるようです。病状が回復した対象者は一般の精神障害者と変わるところはなく、一定の注意さえしておけば普通に付き合える人たちであることがわかるはずです。以前通院処遇の対象者に関するアンケート調査を行ったとき、対象者と身近に接する人ほど不安に感じることが少ないという結果が得られました。余分な先入観を持たず身近に接すれば互いの理解が深まるのではないかと思われます。

医療観察法の医療は現在のわが国の精神科医療の中では最も先駆的なものであると思います。人による適切な関わり方がいかに精神障害の人たちの助けになるかを、身をもって体験できる良い機会だと思います。あまり尻込みしないで思い切って一歩前に進んでみられることをお勧めいたします。

 

相談支援センター

 

1.医療観察制度の支援に携わることになったきっかけを教えてください。

行政からの依頼で、医療観察対象者の支援をすることになりました。医療観察対象者の具体的なイメージはありませんでしたが、"来る者拒まず"という考えでしたし、元々、地域にはいろいろな方がいらっしゃるので、医療観察を受けている方の支援もしてみたいと思いました。また、医療観察制度をよく知らなかったので、どういう制度なのか、どういう支援ができるのかということにも興味がありました。

 

2.ご自身の医療観察制度における支援や関わりについて、具体的に教えてください。

普段、相談支援センターは、処遇のコーディネーター役をしているのですが、医療観察制度においては、保護観察所がその役割を担っていました。そのため、最初のうちは、私の役割は何だろうと思いつつ、まずは対象者との関係作りを大事にし、定期的な訪問や電話相談への対応をすることにしました。また、私が関わったケースでは、地域処遇の途中で、支援者の顔ぶれが変わったので、それまでの経過を新たな支援者にお伝えするということもしました。

 

 

3.医療観察の支援をしてみて、やりがいや苦労したこと、悩んだこと、ためになったことを教えてください。

相談支援センターの利用者に対する支援と、医療観察対象者に対する支援とは、似て非なるものだと感じました。相談支援センターの利用者への支援は、つかず離れずというスタンスで、割と自由に地域生活をしていただいていますが、医療観察対象者の場合は、多くの関係機関が積極的に関わるというスタンスでした。また、エンパワメントの視点だけではなく、再他害のリスクを念頭に置きながら見守るという視点も必要でした。今までは、リスクの視点で関わったことがなかったので、試行錯誤しながらの関わりになりました。

医療観察に携わったことでためになったことは、人が生きるには、これほどいろいろな人の関わりの中で生きているんだということを発見したことです。生きることは大変なことなんだと、よくよく分かりました。医療観察による処遇が終了した現在でも元対象者への支援を続けていますが、常に新しい発見や勉強になることがあります。

医療観察で苦労したことは、最初に得た情報が少なかったことです。後になって、関係者は詳細な情報をもらっても良いということが分かったのですが、最初は、どこまで情報を求めて良いのか分かりませんでした。対象者の処遇方針を決めるケア会議の場では、関係者が同じ情報を持った上で検討する必要がありますので、情報共有に関しては、特段の配慮が必要ではないかと思います。

また、相談支援センターとしての役割や処遇・支援の方向性が見えないことにも苦労しました。医療観察に相談支援事業者が関与しているケースが少ないこともあり,他の関係機関から、私たちの役割が分かりづらかったのかもしれません。私自身、自分の立ち位置が分からず、悩むことがありました。

しかし、医療観察に関わったことで、支援の広がりが持てましたし、知らなかった世界を知ることもできました。密度が濃く手厚い支援をする医療観察の仕組みは、相談支援センターの一般の利用者にも応用できるのではないかと思います。今後、医療観察対象者に限らず相談支援センターの利用者を支援する中で、何か課題が出てきた場合には、相談支援センターだけで抱え込むのではなく、多くの関係機関と連携していくことができるようになったと思います。

 

 

 

4.機関・個人として支援に関わるに当たり、今後の希望や展望などを教えてください

実際に携わってみて分かったのですが、医療観察対象者に対して地域移行支援事業を活用することもあるので、相談支援センターも、早いうちから関係機関として対象者の支援に関われると良いと思います。むしろ、もっと私たちを活用してほしいと思います。相談支援センターの数は少ないですが、私たちも仲間に声かけをして、医療観察対象者を支援する輪を広げていきたいと思います。

 

 

5.今後、医療観察制度の支援をしてみたいと考えている関係機関の方にメッセージをお願いします

相談支援センターのみなさんには、医療観察対象者の担当依頼があったら、ぜひ支援に携わってみてもらえたらと思います。医療観察対象者の支援をすることで、相談支援センターとしての力も高まりますし、ネットワークも広がります。

また、事件を起こす前に、支援の手が入っていれば、悲しい事件を未然に防げたのではないかとも思います。事件に至る前の支援を必要としている人に、どこかで誰かが気づけるシステムが必要だと思います。

 

 

                                   kanfa

 

付添人経験のある弁護士

 

1.医療観察制度に対する意見をお聞かせください。

裁判所,検察官,鑑定医,社会復帰調整官等が,当初から,対象者の社会復帰の促進という目的の下で集結している印象を持ちました。医療観察制度は,精神保健福祉法に比べ,格段に手厚いと思います。この制度の取組みが精神保健福祉法でも取り入れられれば,長期入院の解消や退院して社会復帰できる方はたくさんいると思います。

 

2.医療分野との関わりで興味を持った点や苦慮した点をお聞かせください。

医療観察制度と精神保健福祉法の違いで病院や行政機関によるかかわり度合いの違いがあると感じました。医療観察制度は,何とかして社会復帰させる経過があります。精神保健福祉法は改正されてはいますが,その点ではまだまだだと感じています。私自身,精神医療審査会の委員経験があり,精神保健福祉法による医療保護入院の退院請求審査に携わっていた経験があり,少しでも精神保健福祉法の改善に寄与できればという思いから,付添人として関心を持つようになりました。
  苦慮した点としては,医療用語(SST:社会生活技能訓練など),特に精神分野の言葉は理解出来なかった点です。医学的知識が薄い中で,専門家である医者の意見を聞くと,その意見に感化されてしまう傾向がありました。治療やリハビリに関することが処遇に関わる以上,処遇全体を網羅したセミナーや研修の必要性を感じました。

 

医療観察制度は、心神喪失又は心神耗弱の状態で重大な他害行為を行った人の社会復帰を促進することを目的とした制度です。
当サイトでは、本制度についての普及啓発とともに偏見や差別を取り除くことを目指しています。
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